起業家が「何でも屋」になる危険性

20代大学生がゼロから起業しようとすると、ほぼ必ず直面する誘惑があります。
それが、「何でもやります」状態になることです。

  • 仕事が来るなら内容は問わない
  • 依頼されたことは断らない
  • とりあえず収入になるなら全部やる

この姿勢は、一見すると前向きで、努力家で、起業家として正しそうに見えます。
しかし、実際に多くの起業家を見てきて断言できるのは、
「何でも屋」になった起業家ほど、消耗し、伸び悩み、途中で辞めていく
という現実です。

なぜ「何でも屋」になると危険なのか。
この章では、その理由を構造的に解説します。


1. 「何でも屋」は最初は評価されやすい

起業初期に「何でも屋」になるのは、ある意味で自然な流れです。

  • 実績がない
  • 専門性がない
  • 選ばれる理由がまだ弱い

この状態で仕事を取るためには、
「できます」「やります」「対応します」
と言わざるを得ない場面が多くなります。

その結果、

  • 便利な人
  • 使いやすい人
  • 融通が利く人

として、一定の需要が生まれます。

ここが落とし穴です。
「仕事が来る=正しい方向に進んでいる」と勘違いしやすいのです。


2. 何でも屋は「選ばれている」のではなく「使われている」

何でも屋状態で集まる仕事の多くは、
「この人だから頼みたい」ではありません。

  • 安いから
  • 断らなそうだから
  • とりあえずやってくれるから

という理由で選ばれています。

この違いは非常に重要です。
なぜなら、
「使われている仕事」は、いつでも代替される
からです。

価格を上げようとした瞬間、
条件を変えようとした瞬間、
簡単に切り替えられてしまいます。


3. 時間だけが奪われ、経験が積み上がらない

何でも屋の最大の問題は、
忙しいのに、何も積み上がらないことです。

  • 毎回違う内容
  • 毎回違う業界
  • 毎回違うやり方

これでは、

  • 再現性が生まれない
  • ノウハウが溜まらない
  • 強みが見えない

という状態になります。

一つひとつの仕事はこなしているのに、
「自分は何ができる人なのか」
が、いつまで経っても言語化できません。


4. 価格が上げられなくなる

何でも屋になると、価格設定が極端に難しくなります。

  • 作業内容がバラバラ
  • 比較対象がわからない
  • 自分の価値が説明できない

その結果、
「とりあえず安く」
という判断になりがちです。

しかも、一度安く受けた仕事は、
次も同じ価格を期待される
という現実があります。

気づけば、

  • 労働時間は増える
  • 単価は上がらない
  • 余裕がなくなる

という消耗ループに入ってしまいます。


5. 本当に相性の良い顧客が離れていく

意外に思われるかもしれませんが、
何でも屋になると、良い顧客ほど離れていきます

本気で課題を解決したい顧客は、

  • 専門性
  • 経験
  • 一貫性

を求めています。

「何でもできます」という人は、
裏を返せば
「これが得意です」と言えない人
に見えてしまいます。

結果として、
本来つながるべき顧客との縁が生まれにくくなります。


6. 自分自身が疲弊し、判断力が落ちる

何でも屋状態が続くと、
起業家本人が最も消耗します。

  • 常に新しいことを覚えなければならない
  • 毎回プレッシャーがかかる
  • 仕事の切り替えが多い

この状態では、
冷静な判断ができなくなります。

すると、

  • 断るべき仕事を断れない
  • お金の優先順位を誤る
  • 本来やるべき方向を見失う

という悪循環に入ります。


7. 「何でも屋」は成長段階を間違えているだけ

ここで重要なのは、
「何でも屋になる人がダメ」という話ではないことです。

多くの場合、
成長段階の順番を間違えている
だけなのです。

起業初期に必要なのは、
「全部できること」ではありません。

必要なのは、
「一つの価値を、深く届けられること」
です。


8. 起業家が「何でも屋」から抜け出すタイミング

多くの起業家は、次のような瞬間に気づきます。

  • 忙しいのに、生活が楽にならない
  • 仕事をしても、誇りを感じられない
  • 将来が見えなくなる

これが、
何でも屋から抜け出すサイン
です。

このタイミングで重要なのは、
「仕事を減らす勇気」と
「断る覚悟」です。


9. 大学生起業家が取るべき現実的な戦略

20代大学生がゼロから起業する場合、
いきなり強い専門性を持つ必要はありません。

しかし、最低限次の軸は必要です。

  • 誰向けか
  • 何を解決するか
  • どんな価値を提供するか

この3つを決めるだけで、
「何でも屋」から一歩抜け出せます。

最初は小さくて構いません。
むしろ小さいほうが、尖らせやすいのです。


10. 何でも屋を卒業した起業家が手に入れるもの

何でも屋を卒業すると、起業家は次のものを手に入れます。

  • 自分の強みを説明できる
  • 単価を上げられる
  • 相性の良い顧客が集まる
  • 仕事が積み上がる

そして何より、
「この道で続けられる」という手応え
を感じられるようになります。


まとめ:「何でも屋」は優しさではなく、戦略不足

起業家が「何でも屋」になる危険性は、

  • 選ばれない
  • 積み上がらない
  • 単価が上がらない
  • 消耗する
  • 将来が見えなくなる

という構造にあります。

20代大学生がゼロから起業するなら、
「何でもやります」という姿勢よりも、
「これなら力になれます」
と言える範囲を決めてください。

最初から完璧である必要はありません。
大切なのは、
広げすぎないことです。

その一歩が、
「便利な人」から
「選ばれる起業家」
への分かれ道になります。

Let's share this post !

Author of this article

大学生の頃の自分は、「いつか何かやりたいな」と思いながらも、何をすればいいか分からず、正直モヤモヤしていました。そんなある日、地元の喫茶店でたまたま車屋の社長と出会ったことが、人生のきっかけになります。
「自分もやってみよう」と思い、21歳のときに車の仕入れと販売をスタート。実家の自分の部屋に電話線を引き、名刺を作り、今思えばかなり手探りで“起業っぽいこと”を始めました。
就活はせずに学生のまま起業を目指しましたが、現実はうまくいかず、卒業後はいったんフリーターに。それでも起業への気持ちは消えず、社会経験を積もうと広告代理店に就職しました。そこで学んだことを活かし、26歳で独立。広告代理店を立ち上げ、今は40代となり会社を経営しています。
このガイドは、昔の自分のように「何かしたいけど分からないことばかり」の学生に向けて作りました。完璧じゃなくていい。一歩踏み出すためのヒントを、ここで伝えていけたらと思っています。

TOC