起業という言葉を聞くと、多くの人は「稼ぐ」「売上を伸ばす」「事業を拡大する」といったイメージを思い浮かべます。
特に大学生がゼロから起業を目指す場合、「どうやって稼ぐか」に意識が集中しがちです。
しかし、実際に長く生き残っている起業家ほど、口を揃えてこう言います。
**「稼ぐ力よりも、貯める力のほうが先に必要だった」**と。
一見地味で、起業家らしくない「貯める力」。
なぜ起業家は、この力を軽視しないのでしょうか。
この章では、その理由を構造的に解説します。
1. 起業は「稼げない期間」が前提である
起業をすると、最初から安定して稼げるケースはほとんどありません。
- 売上が立たない期間
- 収入が不安定な期間
- 試行錯誤が続く期間
これらは、どんな優秀な起業家でも必ず通ります。
このときに重要になるのが、「今いくら稼げているか」ではなく、
**「どれだけ耐えられるか」**です。
貯蓄がある人は、
- 焦らずに改善できる
- 無理な判断をしなくて済む
- 短期的な失敗を許容できる
一方、貯める力がない人は、
「今月をどう乗り切るか」だけで判断するようになり、
結果として悪い選択をしやすくなります。
2. 貯める力は「自由な判断」を生む
起業家にとって最大の武器は、実はお金そのものではなく、
選択の自由です。
- 嫌な仕事を断れる
- 条件の悪い案件を受けなくて済む
- 自分のやりたい方向に舵を切れる
これらはすべて、「お金の余裕」から生まれます。
貯蓄がない状態では、
「生活のためにやる」
「今すぐお金になることを優先する」
という判断が増え、本来やりたかった起業からズレていきます。
起業家が貯める力を軽視しないのは、
お金が判断力を守ってくれると知っているからです。
3. 稼ぐ力は波があるが、貯める力は裏切らない
起業で得られる収入は、常に一定ではありません。
- 市場環境が変わる
- トレンドが終わる
- 競合が増える
こうした要因で、急に売上が落ちることも珍しくありません。
稼ぐ力は「外部環境」に左右されやすい力です。
一方で、貯める力は
- 支出をコントロールする
- 生活水準を上げすぎない
- 固定費を抑える
といった、自分で管理できる力です。
起業家は経験的に知っています。
稼ぐ力だけに依存した人ほど、崩れるのも早いということを。
4. 貯める力があると、挑戦の回数が増える
起業は、一度で成功するものではありません。
むしろ、失敗と改善の繰り返しです。
このとき重要なのは、「何回チャレンジできるか」です。
貯蓄がある人は、
- 失敗しても立て直せる
- 次のアイデアを試せる
- 学びを次に活かせる
貯める力がない人は、
一度の失敗が「終わり」になってしまいます。
大学生にとって最大の資産は「時間」です。
その時間を活かすためにも、挑戦回数を確保する貯める力が必要なのです。
5. 「稼げる=使っていい」ではない
起業初期にありがちな勘違いが、
「稼げるようになったら、生活水準を上げていい」という考えです。
- 高い家賃
- 不要なサブスク
- 見栄のための出費
これらは、一度上げると下げるのが非常に難しくなります。
起業家が怖れるのは、売上が落ちることよりも、
固定費が高い状態で売上が落ちることです。
だからこそ、多くの起業家は
稼げるようになっても、意図的に生活水準を上げません。
貯める力とは、
「使わない勇気」でもあるのです。
6. 貯める力は「経営者視点」を育てる
貯蓄を意識すると、人は自然と
- 収支を把握する
- 無駄を見つける
- 優先順位を考える
ようになります。
これはそのまま、経営者に必要な思考です。
逆に、「とにかく稼げばいい」という思考のままでは、
どれだけ売上が増えても、経営感覚は身につきません。
起業家が貯める力を重視するのは、
お金を守るためだけでなく、
経営者として成長するためでもあるのです。
7. 大学生起業家が今から身につけるべき貯める力
大学生がゼロから起業する場合、
貯める力は特別な才能ではありません。
- 生活費を低く保つ
- 固定費を極力持たない
- 稼いだお金の一部を必ず残す
- 「増やす前に守る」を意識する
これだけで十分です。
大切なのは、金額の大小ではなく、
「貯めるという姿勢」を習慣にすることです。
まとめ:貯める力は、起業家の土台である
起業家が「貯める力」を軽視しない理由は、
- 稼げない期間を乗り切るため
- 判断の自由を守るため
- 収入の波に耐えるため
- 挑戦回数を増やすため
- 経営者視点を育てるため
という点にあります。
稼ぐ力は目立ちますが、
貯める力は静かに、確実に起業家を支えます。
大学生がゼロから起業するなら、
「どう稼ぐか」と同時に、
**「どう守るか」「どう残すか」**を考えてください。
その意識が、あなたの起業を短命な挑戦ではなく、
長く続くキャリアへと変えてくれます。
