起業で人に期待しすぎると危険な理由

起業を目指す大学生の多くは、こんな気持ちを抱えています。
「一緒に頑張ってくれる仲間がいれば心強い」
「応援してくれる人がいるから続けられる」
「信じ合える関係で仕事ができたら理想的だ」

これらの気持ちは、とても自然で、人として正しい感情です。
しかし起業の現場では、
人に期待しすぎることが、最大級のリスクになる場面
が何度も訪れます。

これは、人を信じてはいけないという話ではありません。
問題になるのは、
「期待の置きどころ」を間違えること
です。

この章では、なぜ起業で人に期待しすぎると危険なのか、
その構造と背景を、大学生にも理解できる形で解説します。


1. 起業は「自己責任の密度」が極端に高い世界

起業で最初に理解すべき前提があります。
それは、
起業は、自己責任の密度が非常に高い世界
だということです。

  • 誰かが動かなかった
  • 約束が守られなかった
  • 想定と違った

こうした出来事が起きたとき、
会社員や大学生であれば、
組織がカバーしてくれることもあります。

しかし起業では、
その影響はすべて
自分の事業・信用・収入に直撃
します。

この環境で、
「人はこう動いてくれるはず」
という期待を前提にすると、
リスクは一気に跳ね上がります。


2. 期待は「裏切られた」と感じた瞬間に破壊力を持つ

人に期待すること自体は、悪いことではありません。
問題は、
期待が裏切られたと感じた瞬間
に起こります。

  • そこまでやってくれると思っていた
  • 察して動いてくれると思っていた
  • 同じ熱量だと思っていた

しかし、
これらは多くの場合、
言語化されていない期待
です。

相手からすれば、
「そこまで求められているとは思わなかった」
というケースも珍しくありません。

起業では、
期待がズレた瞬間に、

  • 怒り
  • 失望
  • 不信感

が一気に噴き出し、
人間関係と事業の両方を壊します。


3. 「善意」を前提にすると判断を誤る

起業初期は、
善意や好意で人が集まりやすい時期です。

  • 応援しているから
  • 友達だから
  • 面白そうだから

この段階では、
お互いに曖昧な状態でも進めてしまいます。

しかし、
事業が進み、
責任・時間・お金が絡み始めると、
善意だけでは回らなくなる瞬間
が必ず訪れます。

そのとき、
善意を前提に期待していると、

  • なぜやってくれないんだ
  • なぜここで引くんだ

という感情が生まれます。

起業では、
善意はありがたいが、前提にしてはいけない
のです。


4. 人の「優先順位」は簡単に変わる

起業家が痛感する現実があります。
それは、
人の優先順位は、驚くほど簡単に変わる
ということです。

  • 就職が決まった
  • 家庭の事情が変わった
  • 別のチャンスが見えた

これらは、
誰にでも起こり得る自然な変化です。

しかし起業家は、
その変化の影響を
直接受けます。

「一緒にやると言っていたのに」
という感情は、
理解できる一方で、
ビジネス上の判断としては危険
です。

起業家は、
人の事情が変わることを前提に、
設計しなければなりません。


5. 期待が強いほど「確認」を怠る

人に強く期待しているときほど、
人は確認を怠ります。

  • 言わなくてもわかるだろう
  • 今さら聞くのは失礼かも
  • 信頼しているから大丈夫

この状態は、
非常に危険です。

起業では、

  • 役割
  • 期限
  • 責任範囲

を曖昧にしたまま進むと、
必ずどこかでズレが生じます。

人に期待しすぎると、
仕組みでカバーすべき部分を、感情で埋めようとしてしまう
のです。


6. 期待は「依存」に変わりやすい

起業初期にありがちな危険な状態があります。
それが、
特定の人への過度な期待
です。

  • この人がいないと回らない
  • この人なら助けてくれる
  • この人がいれば大丈夫

この状態になると、
その人が動けなくなった瞬間、
事業全体が止まります。

起業家にとって、
人への依存は、
事業リスクそのものです。

期待が強いほど、
依存に近づき、
判断を誤りやすくなります。


7. 人に期待しすぎると「自分の覚悟」が鈍る

起業で最も重要なのは、
最終的に自分が引き受ける覚悟
です。

しかし人に期待しすぎると、

  • 誰かが何とかしてくれる
  • 助けてくれるはず
  • 一緒に背負ってくれる

という意識が生まれます。

この意識は、
行動の質を確実に下げます。

起業家が成長するのは、
「自分がやるしかない」
と腹を括った瞬間です。

人への期待が強すぎると、
この覚悟が遅れます。


8. 起業家は「期待しない=冷たい」ではない

ここで、
多くの大学生起業家が誤解している点を整理します。

人に期待しないことは、
冷たいことでも、
人を信じないことでもありません。

それは、
人とビジネスを分けて考える力
です。

  • 人としての感情
  • ビジネスとしての設計

この二つを切り分けられる人ほど、
長く起業を続けられます。

期待を減らすことで、
人間関係はむしろ健全になります。


9. 大学生起業家が持つべき健全なスタンス

大学生がゼロから起業するなら、
次のスタンスを持つことが重要です。

  • 人は変わるもの
  • 期待は言語化しない限り存在しない
  • 自分が最終責任者

この前提に立つことで、

  • 裏切られたと感じにくくなる
  • 感情的なトラブルが減る
  • 冷静な判断ができる

ようになります。

起業家に必要なのは、
人を疑う目ではなく、
人を過信しない視点
です。


10. 人に期待しすぎないと「感謝」が増える

最後に、
意外な変化を伝えます。

人に期待しすぎなくなると、
人の行動に対して
純粋に感謝できるようになります。

  • やってくれたことが当たり前にならない
  • 少しの協力がありがたい
  • 応援が心から嬉しい

期待が少ないからこそ、
人の善意が
そのまま価値として受け取れるのです。

これは、
起業を続けるうえで、
非常に大きな精神的安定につながります。


まとめ:起業家は「人を信じる前提」を設計で補う

起業で人に期待しすぎると危険な理由は、

  • 自己責任の密度が高い
  • 期待はズレやすい
  • 善意は永続しない
  • 人の優先順位は変わる
  • 依存が生まれやすい
  • 覚悟が鈍る

という、起業の構造そのものにあります。

大学生がゼロから起業するなら、
人に期待しない起業家になってください。

それは、
孤独になるという意味ではありません。

自分が引き受け、
人には感謝する起業家になる

ということです。

このスタンスを持てたとき、
人間関係は壊れにくくなり、
起業は驚くほど前に進み始めます。

期待に頼らない起業は、
冷たい起業ではありません。
強くて、長く続く起業
なのです。

Let's share this post !

Author of this article

大学生の頃の自分は、「いつか何かやりたいな」と思いながらも、何をすればいいか分からず、正直モヤモヤしていました。そんなある日、地元の喫茶店でたまたま車屋の社長と出会ったことが、人生のきっかけになります。
「自分もやってみよう」と思い、21歳のときに車の仕入れと販売をスタート。実家の自分の部屋に電話線を引き、名刺を作り、今思えばかなり手探りで“起業っぽいこと”を始めました。
就活はせずに学生のまま起業を目指しましたが、現実はうまくいかず、卒業後はいったんフリーターに。それでも起業への気持ちは消えず、社会経験を積もうと広告代理店に就職しました。そこで学んだことを活かし、26歳で独立。広告代理店を立ち上げ、今は40代となり会社を経営しています。
このガイドは、昔の自分のように「何かしたいけど分からないことばかり」の学生に向けて作りました。完璧じゃなくていい。一歩踏み出すためのヒントを、ここで伝えていけたらと思っています。

TOC